おとぎの国のお姫様は麻薬中毒者〜Chapter 7〜





















「イールフォルトさんよー姫はどうしたんだ?」

姫ならもう俺の手中だ」

「じゃあやらせろよ」

「断る。お前には触られたくない」




いつも通り薬の調達に店にやってきた。
グリムジョーが俺につっかかってきやがる。
一体何様のつもりだ?
俺は多額の金をお前達に支払っているんだぞ。




俺は溜息を吐き、店の椅子に腰掛けた。




「グランツ家のお坊ちゃんも落ちぶれたもんだな」

「お前程じゃあない。
グリムジョー、貴様の様に俺は売り子までしていないんだからな」

「変わりねぇよ。一国のお姫様をやっちまったんだからな」




俺の家は貴族だ。
もう家とは呼べないがな。
だから姫とは遠い親戚になる。


俺がまだ13くらいの時だ、姫と初めて会ったのは…
薔薇色の頬をした愛らしい姫。
俺の理想だった。
俺は親に姫と結婚させてくれとまで頼んだ。
然しそれは出来ない事だと言われた。
身分の差。
貴族と王族は結婚出来ない。
王族は別の国に嫁ぐのが伝統なんだと。
血を離す為の手段だ。
人間の本能に程近い。
俺はその日を境に夢を失った。
何もかもを捨てた。
身分もプライドも家族も。
俺にそんなものは必要なかったからだ。
俺が欲しいのは姫だけ…




「騒がしいと思えばイールフォルトが来ていたのか」

「ああ、ウルキオラか」



店の奥からウルキオラが姿を現した。
寂れた店によく似合う、深く寂しい瞳をした男。




姫やっちまったんだと」

「飛んでもないな。後処理はどうするつもりだ?」

「適当にしたさ。
彼処で姫を深く理解している奴は一人も居ない。
ある程度の時間なら居なくなってる事さえ気付かないカス共だからな。
あとは簡単。姫と俺とで逃げればおしまい。
俺の戯曲はハッピーエンドで幕を閉じる」




俺は自嘲気味に笑った。
高笑い。
店に異様に響いて俺に返ってきた。




「楽しいか?」



ウルキオラの表情は絶対に変わらない。
そのままで俺を見ている。





「ああ、楽しいさ。二年も掛けたんだぞ。計画に。
成功の杯でも交わすか?」

「それなら良いがな」

「意味深だな」




俺はウルキオラをじっと見返した。
やっぱり奴の表情は変わらない。




「足がつくぞ、必ず」

「それはどうだかな」

「俺も危険だとは思うぜ」

「煩いな」




どいつもこいつも煩い。
カスのくせに。
俺の好きにさせろ。




「もういい、帰る。薬を早くよこせ。
金は置いてあるからな」

「金は尽きるものだぞ」

「俺は尽きないんだよ。元貴族だからな」




伝手なんていくらでもある。
俺は手渡された薬を手に店を後にした。
俺は裏の世界で生きていく。
"似合わない"と言われてもな。
そう決めた。
姫だって、もう誰にも渡さない…
俺だけのものなんだ…!









イール裏話。
なんか可哀想な子ですなー
06/03/27   PM23:00


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